2010.05.07

おすすめ資料 第111回 若者よ、覚醒せよ ―真の国際人をめざして―

御茶の水女子大の名物教授、藤原正彦氏による、同大学生を対象とした、文字通り「名著」をめぐる読書ゼミの記録です。とりあげられているのは『学問のすゝめ』『武士道』はじめ、岩波文庫に収録されている明治期の大物の著作ばかり。しかし、名前を聞くわりに実際に読んだことのない題名がならんでいます。いや、むしろ、今学生が読む価値があるのかという疑問の声が聞こえてきそうな著作ばかりです。

綺羅星のようにならぶ明治期の著作、明治の人の熱い思いに触れたとき、学生たちの考え方、日本への思い、読書、学問への気構えに変化がおこっていくのが本書を通してわかります。もちろんそれは藤原先生の分厚い知識と愛情によって導かれたものであるともいえますが、学生と先生の真剣な「読み」と論議、それに十分応える内容の著作であればこそといえるでしょう。

日本への愛と、日本人ならではの美的感受性という、失ってはならないものを失ってしまっている現代の薄っぺらな日本人ですが、まだ遅くはありません。本当の「国際人」を目指すのなら、ぜひ、「名著」の扉をたたいて自分の国のことにもっと関心をもってください。本書は大学生にとってのよき「名著案内」であるとともに、自ら読み、考えることへの道標となると思います。

2010年5月7日(長)