2007.11.09

おすすめ資料 第50回末路哀れは覚悟の前やで

桂米朝著『落語と私 』ポプラ社 [N779=28]

大阪商工会議所の試算によると上方落語の定席「天満天神繁昌亭」開席後1年間の経済波及効果は総額116億3000万円に上るそうです。

テレビでの「タイガー&ドラゴン」のヒットなど、東西を問わず落語が人気で、少し大きな書店には落語本のコーナーが設けられ、かなりの数の書籍がならべられたりしていますが、それらのうちの多くは名人上手の芸談であったり、落語の演目の解説がほとんどで、落語というものが一体どのような芸能であるのかを過不足なく説いてくれるような書物を探し当てるのは、なかなか難しいのではないでしょうか。

今回紹介する『落語と私』は、落語界唯一人の人間国宝である米朝師が、若いひと向けに書いた入門書という体裁をとってはいますが、解説の小沢昭一氏が「芸能実演家必読の書」というように、玄人にさえ、読むほどにその含蓄の奥深さが感じられる内容となっています。

「人生の百科事典」ともいえる落語は、生の演者が客の反応を見ながら演じるインタラクティブなライブ感が身上の芸能です。「笑門来福」、この書物をナビゲーターに、ぜひ一度<生>の高座に接して落語の楽しさを味わっていただけたらと思います。

2007年11月9日(牛)