2008.01.11

おすすめ資料 第56回レイチェル・カーソンの生き方をもっと知ろう!

上岡克己ほか篇『レイチェル・カーソン』ミネルヴァ書房 [N289.3-535]

レイチェル・カーソンといえば、農薬による環境汚染を警告した『沈黙の春』[新潮文庫]の著者として知られています。

「はしがき」によりますと、「2007年はアメリカの作家で海洋生物学者であったレイチェル・カーソンの生誕100年にあたる。これを機会に私たちはカーソンの全体像をとらえるような本を出版したいと考えていた」とあるように、この図書はレイチェル・カーソンの単なる伝記ではありません。4部の構成の中で、12人の執筆人がいろいろな角度からカーソンを描いています。どこから読んでも、興味深いのです。そして、各部のタイトル・ページには、「心に残る名言」として、カーソンの著作からの英文の引用があります。

もともと作家志望で文学を専攻したカーソンが、スキンカー教授の生物学を選択したことにより、幼いときから自然界の生き物に興味を持っていたこともあり、生物学者になりたいと考えはじめたこと、『沈黙の春』を執筆中に癌が発見され、放射線治療に一時寝たきり状態になりながらも、苦闘4年をかけて完成させたこと、母親、スキンカー、ドロシー・フリーマンというカーソンのまわりの身近な女性たちの精神的な支えがあってこそ、彼女の作品が完成したこと、ジェンダーの闘い・・・興味はつきません。

カーソンの著作は『沈黙の春』だけではありません。海洋生物学者であったカーソンには海の三部作と1956年に女性雑誌に「子どもたちに不思議さへの目を開かせよう」という題で掲載され、死後に『センス・オブ・ワンダー』という単行本として出版された本もあります。この本の中にこうあるそうです。「地球の美しさについて深く思いをめぐらせる人は、生命の終わりの瞬間まで、生き生きとした精神力をたもちつづけることができるでしょう。鳥の渡り、潮の満ち干、春を待つ固い蕾のなかには、それ自体の美しさと同時に、象徴的な美と神秘がかくされています。自然がくりかえすリフレイン―夜の次に朝がきて、冬が去れば春になるという確かさ―のなかには、かぎりなくわたしたちをいやしてくれるなにかがあるのです。」

外大で語学を勉強するのは、当然のことですが、外国語を使って話をするとき、伝えたい何かが自分にあるかどうかが大事になってきます。学生時代にレイチェルの生き方を知り、伝えたい何かの引き出しを増やしていってください。

2008年1月11日(達)