2008.01.25

おすすめ資料 第57回待ち時間もお客さんのコストです。~本質を発見する50のエッセイ~

斎藤由多加著『ハンバーガーを待つ3分間の値段 : ゲームクリエーターの発想術』(幻冬舎セレクト)幻冬舎 [N914.6-282]

この本のタイトルは、客からみれば待ち時間もコスト(=支払う値段や代償) の一部だ、という意味です。(p68-69,文庫p72-73「ファーストフードの意味」より)。

注文後に店員の一言『~は3分少々お待ちいただきますがよろしいでしょうか』があれば、「待つ/別のものを注文する/急いでいるのでキャンセルして帰る」といった行動の選択権を、客自身が持てるようになります。『はい、かしこまりました』だけでは、客はいつまで待てばいいのか分かりません。席を外すこともできずに、ただひたすら待たされるはめになり、行動の選択権を奪われることになります。

客がファーストフード店に期待する"Fast"は「客が店を出るまでの時間を指すのであって、単に調理時間のことではない」(p69,2-3行目)ですし、又「本当のサービス度とは客に選択肢を与えること」(p69,10-11行目)だ、というわけです。

他にもこの本には、普段見落としがちな「本質を発見する」ためのエッセイが、著者斎藤氏の実体験を中心に50本掲載されています。いずれも2~3pの短いエッセイですので気軽に読むことができますが、ゲームクリエイターとして多くの人気を集めた著者ならではの着眼点がとても面白く、いつもとは違った視点・着眼点で物事をみる体験を楽しめる1冊です。

尚、文庫版が刊行されていて(2007年9月)、表現が若干修正されている分、より読みやすくなっています。これから入手される方には、文庫版をおすすめします。最後に、その他のエッセイから一部をご紹介します。答えは本文にて。

1.公衆電話からの110番
公衆電話からの110/119の通話料金は、誰が支払っている?
→(p166-167,文庫p172-173)「110番の電話代は誰が負担しているのか?」
2.謎の広告
電柱の張り紙「Loose 30 lbs, 30day 30,ドル 555-XXXX」は何の広告?(アメリカにて)
→(p46-49,文庫p48-51)「人間の補完能力」
3.待ち時間の表示
遊園地や駐車場が、「ここから50分待ち」などと待ち時間を表示している理由は?
→(p70-73,文庫p74-77)「ディズニーランドの場合」
→(p76-77)「親切心の賞味期限」、(文庫p80-81)「情報の賞味期限」
4.違法駐車の代償
違法駐車のペナルティーは、罰金だけ?
→(p175-176,文庫p181-182)「もうひとつのペナルティー」
5.デパートの灰皿
デパートは店内が全面禁煙なのに、入口に灰皿が置いてあるのはなぜ?
→(p168-171,文庫p174-177)「北風と太陽」

2008年1月25日(柿)