2008.04.04

おすすめ資料 第62回日本語と外国語のあいだ

米原万里著 『不実な美女か貞淑な醜女か』徳間書店 [N801.7-41]

「不実な美女」というフランス語は、「美しいが、原文に忠実でない翻訳」のことを指して用いられるそうです。本書は、ロシア語同時通訳者として活躍した米原万里氏のエッセイです。同時通訳の修羅場と失敗談、2つの言語の間を行き来することの面白さと苦しさについて軽妙に語っています。

異なる言語間のコミュニケーションを成功させるには、外国語の能力だけでなく、美しい母語を駆使できる能力も欠かせないことが本書から理解できます。母語が貧弱では、いくら外国語ができたとしても、異なる言語間の橋渡しという通訳の至上課題をこなせないのです。

外国語を学ぶということは母語を豊かにすることであり、母語を学ぶということは外国語を豊かにすることだと、著者は言っています。新学期、ご自身と母語と外国語との関係を見直してみるのもよいのではないでしょうか。

2008年4月4日(永)