2008.10.03

おすすめ資料 第74回外国語で読む『源氏物語』 その1 英語

※上記の資料は、2008年10月1日より2009年3月24日まで図書館ロビーで展示しています。

2008年は源氏物語が書かれたとされる年からちょうど千年目にあたります。今月からの「司書のおすすめ」では、当館で所蔵している各専攻語で書かれた源氏物語や関連サイトを紹介していきます。初回は、各国語への翻訳が行われるきっかけにもなった英語版をご紹介します。

1925年から1933年にかけ、イギリスの学者アーサー・ウェイリーによる翻訳がThe Tale of Genjiとしてロンドンで出版されました(1)。原文に忠実というより翻案が多く、大胆な意訳と評されるウェイリー訳ですが、そのことによって文学的な質の高さを得て、英語圏で広く受け入れられたとも言われます。このウェイリー版源氏物語は、近々平凡社ライブラリーから日本語訳が刊行される予定です(当館でも受入予定)。

その後、1976年にエドワード・サイデンステッカーによる翻訳が出版されました(2)。サイデンステッカーは川端康成など日本文学の翻訳や海外への紹介につとめたことで知られる人物です。サイデンステッカー訳は、ウェイリー訳では省かれた箇所を含めた全訳で、源氏物語の重要な構成要素である和歌の部分も訳されています。

さらに2001年にはロイヤル・タイラーによる全訳が出版されます(3)。原文を生かし、それを補うように豊富で緻密な注釈をつけていることが特長です。たとえば、源氏物語の登場人物は官位などによって文中での呼称が変化しますが、それをそのまま訳し、脚注で「即ち誰それである」というような説明をしています。また祭礼や装束など当時の文化についての説明も多く、知識のない人が物語を読み進める助けになっています。

西洋の研究者によって伝えられた「源氏」はどんな姿だったのか、ご自分の目で確かめてみてください。

2008年10月3日(橋)