おすすめ資料 第81回 「遊び」と人間の歴史を考える

J.ホイジンガ著高橋英夫訳『ホモ・ルーデンス : 人類文化と遊戯』中央公論社 [N209-37]

学際研究の先駆者、ホイジンガの名著で今も版を重ねるロングセラーです。ホイジンガは「ホモ・サピエンス(理性を持つ人)」と呼ばれていた人間の本質は「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」であると定義づけ、遊戯の側面から法律・戦争・詩・哲学・芸術に関して歴史学・文化人類学を駆使して説明してゆきます

祭祀などに遊戯の要素を求めることは容易ですが、ホイジンガは遊戯は文化より古いものととらえ、言葉の誕生さえ、心の中でイメージを操る「遊戯」から始まり、物に名を与え、物質を精神の領域に導くことでなされたとしています。

彼によるとルネサンスは「遊戯」が最も真摯に実行された成果で、当時の創造や発明はその時代の生活・文化の具象化をつき進めることにより後世の財産となりました。その後、世の中が整備され近代の合理化・専門化が進められるにつれて「遊戯」の精神は弱まってゆきます。

「遊戯」にはルールがあり、遊戯を知る人は暗黙の了解の下にあるそのルールに則って行動します。それはかっては政治の世界にもありました。遊戯が失われるとものごとには面白みが失われ、ときには容赦のないものになります。終盤ホイジンガはそう述べています。

博識に裏打ちされた読み応えのある資料ですが、古代から現代までを通史的に俯瞰した11章以下から読み始めるのもよいと思います。

2009年1月23日(梶)