2009.05.16

おすすめ資料 第89回 上質な日本語が描くヨーロッパの風土・文化

1) 須賀敦子著『コルシア書店の仲間たち』文藝春秋 [N914.6-216]

2) 須賀敦子著『トリエステの坂道』(新潮文庫) 新潮社 [新潮文庫]

3) 須賀敦子著『須賀敦子全集』第1〜8巻、別巻 河出書房新社 [N918.68=85=1〜8, II]
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ヨーロッパの風土と文化を全身で感じ、それを表現し得た遅咲きのイタリア文学者、エッセイストの須賀敦子。彼女が亡くなって10年以上が過ぎようとしていますが、今も根強いファンが多くいます。

若い頃をイタリアで過ごし、イタリア人と結婚、帰国後は大学などの非常勤講師を勤め、50代からエッセイストとして注目されるようになりました。

女流文学賞を受賞し、世に出るきっかけとなった『ミラノ 霧の風景』、著者20〜30代のコルシア書店での青春の日々を描いた『コルシア書店の仲間たち』など、今は全集としてまとめられています。また本業であるイタリアの作家アントニオ・タブッキなどの翻訳も多く手がけています。その美しく上質な日本語は、彼女の教養に裏打ちされ、深く静かに読み手に響いてきます。外国の文化を理解し、語るとはどのようなものなのか、翻訳とは、といったことを考えるときに参考となると思います。

といっても、彼女の文章は堅苦しいものではありません。むしろ、心がささくれているとき、心がざわざわするとき、なぜかゆったりとおちついた気分にしてくれます。ぜひ一度手にとって異文化を心で感じてみてください。

2009年5月15日(長)