2009.08.14

おすすめ資料 第94回 ロシア語を生かせる21世紀になるのか?

『ロシア・ショック』は、ここ10年経済成長の目覚しいロシアを大絶賛し、「日本が最も注目すべき国」として迷わずロシアを名指しています。ペレストロイカ、さらにソ連崩壊後のカオス状態を経験し、ようやく国土や軍事・政治といった分野だけではなく経済面においても大国とみなされるようになったロシア。著しい経済発展を遂げた背景を明らかにし、現存する問題点に言及しながらも、その潜在的パワーを信じて今後日本がパートナーシップを築くべきであると力強く主張しています。

しかし、この『ロシア・ショック』が発行されたのは2008年10月の世界金融危機が発生した直後(11月)であり、危機がロシア経済にもたらす影響についてはほとんど触れられていません。

そこで同時におすすめしたいのが、今年4月発行の『ロシアと世界金融危機:遠くて近いロシア経済』です。前掲の著書と同じくロシアの経済的発展の背景を述べてはいますが、現状での問題点や金融危機後の展開の予測などについても、クールな見解が示されています。

ところで、経済とはまったく関係ないほんの蛇足ですが、前者ではロシア人が「無条件に日本のことが大好き」であることから話が始まり、後者は「日本人はなぜ「ロシア」が嫌か?」という問いかけから始まっています。両筆者の立脚点の違いが見えるようで興味深いところです。

もちろん、ここに挙げるふたりの著者の意見がすべてではありませんが、最新のロシア経済事情の概要を知るには、とても読みやすい導入書といえるでしょう。

2009年8月14日(則)