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2018年4月11日

2018年度宣誓式・入学式を挙行しました

4月5日、492人の新入生を迎えました。

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新入生は、久元喜造神戸市長から祝辞をいただき、教員、先輩をはじめ多くの方々から祝福を受け、本学学生としての大学生活をスタートさせました。

新入生代表からは、「優れた国際感覚を身につけ、行動する国際人として21世紀のよりよい社会作りに貢献できるよう努力いたします。」と力強い宣誓があり、式典後には指導教員や事務局からのオリエンテーションがありました。

ここに、指学長の式辞を紹介します。

学長式辞

0405nyugakushiki.png新入生の皆さん、神戸市外国語大学入学おめでとうございます。別室でご参観の保護者のみなさま、本日は誠におめでとうございます。本日、大学院に41名、学部に451名の入学者をお迎えすることになったことを、教職員一同、うれしく感じております。

また、本日多忙の中、ご参列下さいました神戸市長の久元喜造(ひさもときぞう)様を初め、ご来賓の皆様に御礼申し上げます。まことにありがとうございます。

新入生の皆さんは、神戸という魅力にあふれる町に来られて、大学での勉学以外に、何を楽しみにされているでしょうか?「神戸で暮らすのだから、これは外せない!」というものがたくさんあると思います。皆さんなら、そういった場合、スマホで検索をして、お勧めのランキングを見つけられると思います。行ってみたい場所、美味しいスイーツなど、たくさんの情報が得られるでしょう。そのうちに、ランキングではこうなっているが、こちらの方がお勧めだよ、とか、ここが穴場だ、といった、「神戸っ子」らしい会話を楽しまれるようになるでしょう。

こうした、ものごとを評価して順位を付けて楽しむことは、江戸時代から盛んでした。相撲の番付をモデルにして、全国の温泉の番付とか、人気俳優の番付、美味しいお店の番付、どこの山が良い、あそこのお寺が御利益がある、といった風にたくさんの番付が作られました。「ランキング好き」は日本文化のひとつの側面とさえいえるかもしれません。ちなみに、江戸時代の温泉番付では、神戸の有馬温泉は堂々の一位(西の大関)です。

さて、最近は大学も各種ランキングによって評価されるようになってきました。大学も、全国に770以上もありますので、順番を付けてみたいと思うのも仕方ないのかもしれませんし、みなさんも自分の学校はどうなんだろう、と気になるでしょう。新聞などでも報道されましたが、先月末に「世界大学ランキング日本版」が発表されました。最近よく話題になる世界の大学ランキングの日本版です。そこで、本学は国際性という点で10位に評価されました。さらに、海外留学経験者の多い大学としても10位になっています。

「世界につながる」という、外国語大学にふさわしい点で評価されたのは嬉しいことです。ただ、現在の大学生にとって、海外に行くということは、それほど特別なこととは感じられないかもしれません。みなさんの中にも、すでに何らかの海外経験をお持ちの人も少なくないかと思います。ところが、一方で、日本人のパスポート取得率は、25パーセントほどで、4人に1人の割合だそうです。意外に少ないと感じられるかもしれません。まだまだ世界を遠くに感じる人が多いということかもしれません。

わたしが大学生であった頃は、まだまだ外国は遠い存在でした。でも、いつかは、いちどは、ヨーロッパに行ってみたいな、という憧れをいだいていたことを思い出します。 時代をもっとさかのぼれば、海外、とくに遠く離れた西洋への憧れはより強くなります。

詩人萩原朔太郎は、1920年代に、その想いを「ふらんすへ行きたしと思へども、ふらんすはあまりに遠し」と嘆き、「せめては新しき背広をきて気ままなる旅にいでてみん」と唱いました(「旅上」)。ヨーロッパへ行くことはかなわないけれども、西洋の服である背広を着ることで、ヨーロッパの文化に思いを馳せたわけです。明治大正の芸術家の多くは、こうしたまだ見ぬ海外への憧れから、新しい日本の文化・芸術を生み出していくことになります。

では、実際に欧米を見ることができた人々はどう感じたのでしょう。夏目漱石がロンドン留学をしたのは1900年のことですが、日本との文化・社会や価値観の違いを痛感したことが、その後の文学者漱石を生み出しました。

さらにさかのぼって、明治4年(1871年)の岩倉使節団に例をとってみましょう。岩倉具視を団長として、当時の政府の要人が合衆国やヨーロッパ諸国を、3年をかけて視察して回ったものです。当初は、条約改正を目的としたものでしたが、途中で諸国の産業や社会の視察に重点が移されました。その記録を読むと、進んだ西欧諸国の繁栄を目の当たりにして、驚く様子と、一方で、その問題点や日本が参考にすべき点を、冷静に観察している様子がわかります。そこで、日本とヨーロッパの差は40年の遅れだと見極め、40年後には日本も追いつける、という分析をしています。

こうした異文化・外の世界への憧れや屈折、さらには「自分たちはまだ遅れている」という感覚は、「良い意味での」コンプレックスと置き換えて良いかもしれません。「良い意味で」というのは、ただ自らを卑下して圧倒されてばかりではなく、自分とは何かを考え、自分に足りないものを客観的に見つめ、憧れの対象から何かを学び取ろうという姿勢のことです。

憧れや自分に何が足りないのかを自覚することからの「学び」は、単なるモノ真似に終わるのではなく、そこから新しい芸術やモノ、新しい社会までも生み出す創造的なものになり得ると思います。そのためには、対象に敬意を払いつつも、それに縛られない自由な精神と発想の豊かさが求められます。とりわけ変化の激しい現代社会では、新しいものを生み出す力がいっそう求められるでしょう。

皆さんも、これから体験されるであろう様々な「海外」経験--実際に海外に出ないままでも、様々なメディアから受け取る情報による経験も含めて--から、みなさんなりに、新しい創造を試みてほしいと思います。

さて、海外経験と並んで本学の学生の誇れる点が、気質の良さです。「品格がある」という評価をいただいたこともあります。もし、「学生の気質」というランキングがあるなら、必ず上位に位置付けられるのは間違いないでしょう。

ボランティア精神が旺盛で、人のために良かれと思うことを、押しつけや打算ではなく、自発的に行う。勉学も含めて、あらゆることに誠実に向き合う。みなさんの先輩のそういった姿勢が評価されています。しかし、本学では、みなさんの気質を良くするための道徳のようなカリキュラムを特別に用意して押しつけているわけではありません。それなのに、多くの学生が「品格がある」と評価されます。不思議といえば不思議ですが、これが無意識のうちに受け継がれていく「校風」や「伝統」というものかもしれません。

ただ、こうした評価・伝統は、旧来のままじっとしておれば維持できるものではありません。より良い気質、品格が意味する内容は、時代とともに変化してゆくでしょう。昔なら美徳であったことが、今では悪しき因習になっていることもあります。

現代に求められるものは何であるのかを常に問いかけて、変えるべき点は変えていく必要があります。伝統を守る老舗でも、昔のままでは時代に取り残され、伝統を維持できない。むしろ、変わり続けることで伝統を守る、といわれます。伝統に敬意を払いつつも、それにただ従うのではなく、時代に合った新しい品格を生み出してゆくことが大切だと思います。

「外の世界と向き合い、新しいものを創造する」、本学での学びによってそれに挑戦して下さい。私たちは、それを全力でサポートいたします。今日から本学の一員となられる皆さんと一緒に、これまでの卒業生にも、また、これからやってくる皆さんの後輩、未来の学生にも誇れる、さらに魅力ある大学を作り上げていけることを願っています。その願いをもって、わたしの式辞とさせていただきます。

入学、おめでとうございます。