2009.11.20

おすすめ資料 第101回 あの人の講義が聞きたい!

大学選びに「あの先生の講義をぜひとも聞きたい」という理由を挙げる受験生が多いとは思えませんが、入学してから学問的な蓄積が増してくると「この先生の講義が聞きたい!」という欲求が生まれてくるのは不思議ではないかもしれません。

山口昌男先生の謦咳に是非直に触れてみたいと思わせるものが『学問の春』には確かにあって、その最大のものの一つは、ある既存の知識が、一見無関係と思われるような別の知識と出会うことによって、お互いが変容して全く新たな地平が開かれるといった経験を味わうことが出来ることではないでしょうか。

一つだけ例をあげると、ポミアンの『コレクション』にふれた「・・・物語は重大な要素である。物はただ物ではない、歴史や神話を運搬する『記号保持物』である・・・」(263ページ)という文章を読んだとき、「はてなの茶碗」(ほとんど価値の無い清水焼の漏れ茶碗が人の手を経るうちに物語が積み重なってとんでもない値打ちモノになっていくという落語の演目)が唐突に浮かんで、なるほどなぁとその面白さを再認識したわけです。

興味をもたれた方は、『山口昌男著作集』筑摩書房 [N389-181-1,2,3,4,5]なども繙かれて「様々な学問の華咲き乱れる春」を実感してみては如何でしょうか。

ちなみにこの講義のテキストは「おすすめ資料」第81回で紹介されているJ.ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』であることを付け加えておきます。

2009年11月20日(牛)