2010.02.19

おすすめ資料 第107回 変化を続ける社会の中の静かな文学

  1. リュドミラ・ウリツカヤ著 沼野恭子訳『ソーネチカ』新潮社 2002年 [N983-153]
  2. リュドミラ・ウリツカヤ著 前田和泉訳『通訳ダニエル・シュタイン』新潮社 2009年 [N983-196-1~2]

変化に次ぐ変化、発展に次ぐ発展を続ける現代ロシア社会では、その時勢に合わせてアップテンポなストーリーやスリリングな展開が面白い小説や映画が好まれているのかと思いきや、今、ロシア文学界で脚光を浴びているのは、主人公の生活や一生を淡々と語るといった静かな作品を作り続けているリュドミーラ・ウリツカヤです。

たとえば、1.『ソーネチカ』(原著≪Сонечка≫は≪Медея и ее дети≫(1996)[露983-820]に所収)。時代はソ連時代、主人公は図書館で働く本が大好きな女の子ソーネチカです。ソーネチカが働き、結婚し、出産し......という女性としての生活を営む中での出来事が淡々と語られています。

ウリツカヤはこの作品で1998年にフランスのメディシス賞(外国文学部門)、同年イタリアのジュゼッペ・アツェル賞を受賞し、世に認められるようになりました。彼女はここ15年あまりの間に多くの作品を生み出してきました。

それら作品の日本語訳として一番新しいところでは2.『通訳ダニエル・シュタイン』(原著≪Даниэль Штайн, переводчик≫(2006)[N983-208]、2007年ボリシャヤ・クニーガ賞受賞)がありますが、まだまだすべての作品が翻訳されている訳ではありません。彼女の作品はわりと読みやすいロシア語で書かれており、短編が多いです。当館では原著も数冊そろえていますので、翻訳された作品を読んで彼女のスタイルが気に入った人には、ぜひ原著にも挑戦することをおすすめします。

参考までに、上記以外の当館所蔵のウリツカヤ作品の請求記号は下記の通りです。

日本語訳:

原書:

2010年2月19日(則)