2011.01.07

おすすめ資料 第119回 「ことば」を通してインターネットのカラクリを見る

  • 相澤彰子, 内山清子, 池谷瑠絵著 『 からくりインターネット : アレクサンドリア図書館から次世代ウェブ技術まで』(丸善ライブラリー379) 丸善 2010 [N081-22-379]
  • 本書は丸善ライブラリーという新書版シリーズの一冊です。内容的には、情報学(視聴覚コーナーのすぐ横)や通信工学(図書館カウンターを越えて新着図書コーナーの横)の棚にあるほうが皆さんの目に留まりやすいのですが、本学では図書館入り口側の、岩波新書や中公新書の並びにあります。

    インターネットは大学生活では欠かせない道具(ツール)になってきています。ブラウザもサイトもユーザーフレンドリーに進化し、使いやすくなってきています。これは素晴らしいことなのですが、一方で、「仕組みについては知らなくてもまったく困らない、知らなくてもいい」という状況も作ります。

    本書を読むと、インターネットが私たちや社会に与える影響は、まだよく分かっていなくて、研究途上だということが分かります。インターネットの正体がよくわからないと、足をすくわれるかも知れません。インターネットの仕組みは知っておくほうがよいことのように思います。

    インターネットの解説本となると難しいという印象を持たれるかもしれませんが、そうではありません。図説と称して著者の頭の中を図示されただけの安直で総花的な解説本よりも、ずっとわかりやすくインターネットの本質が語られています。

    本書を特に皆さんにおすすめする理由は、インターネットを「ことば」(テキスト)という切り口で説明している点です。筆頭著者の相澤さんは、「ウェブ上のことばを対象としたテキスト処理」が専門で、前書きの中で「私の研究対象であるこの『ウェブの中の言葉』を通じてならば、数式やプログラムよりもずっとわかりやすく、広く一般の方々にインターネットのしくみを説明できるのではないか――そんな思いをきっかけに、この本の執筆はスタートしました」と述べています。「ことば」に対しての感受性が高く、言葉の科学の知識もある本学学生さんには、ふさわしいと思います。

    国立情報学研究所のサイトに、本書の紹介を兼ねた著者インタービューが掲載されています(情報研シリーズ13 著者からのメッセージ みんながインターネットを使う時代だからこそ)。

    2011年1月7日(堀)