2011.08.05

おすすめ資料 第126回 アクーニン文学のすすめ

暑い夏がやって来ました。夏休みの間、普段読めなかった長編小説に読み耽る予定の方も多いことでしょう。そんな時の"ちょっと一休み"におすすめなのが、現代ロシア小説家ボリス・アクーニンの探偵小説『堕ちた天使―アザゼル』です。

舞台は19世紀後半のロシア。みなさんご存知のトルストイやドストエフスキーと言った有名作家たちが生で生きている時代です。とは言っても作風は、かの作家たちとはまるで異なり、至って現代風。読み進んでいくと、時代が19世紀なのだ、ということをつい忘れてしまいそうになります。物語は、若き刑事である主人公エラスト・ファンドーリンが巧みな推理力と行動力で陰謀に立ち向かっていく、という探偵推理ものです。

原書では"エラスト・ファンドーリンの冒険"と銘打ち、シリーズ化もされています。日本でも他に2作品(『アキレス将軍暗殺事件』[N983-220]『リヴァイアサン号殺人事件』[N983-222])が翻訳されており、シリーズ完全翻訳が待ち遠しいところです。

さて長くなりましたが、これに関連して最近新しい本が受入れされました。原書の<<Азазель>>[露887-53]<<Левиафан>>[露887-52]です。但し、外国人向けのロシア語学習読本仕様(2300語レベル、力点付)になっていますので、2年生以上であれば十分に楽しめるのではないでしょうか。

また、<<Азазель-Борис Акунин в комиксах->>[露726-2]も併せて受入れしています。こちらは『堕ちた天使―アザゼル』のカラーコミック版となっています。本を読んでからならもちろんのこと、読む前でも、ロシアの漫画の絵はこんな感じなのだなぁ、と意外な楽しみ方もあったりして面白いと思います。

この夏、ファンドーリンと一緒に19世紀ロシアの街中を歩き回ってみませんか。内容は流石に重苦しい部分もありますが、それもまた一興。きっと読み進める内にファンドーリンと仲良くなれると思います。ぜひ手に取ってみて下さい。

なお余談ですが、アクーニンというペンネームは、日本語の「悪人」から名付けているそうです。作家が大変な日本通だそうで、私たち日本人としては嬉しい限りですね。

2011年8月5日(須)