2012.01.20

おすすめ資料 第131回 紙の本の楽しみ方

みなさんは紙の書籍と電子書籍、どちらをよく利用しますか?
タブレット端末の普及によって電子書籍はさらに身近なものになりました。重さや大きさを気にせず何冊でも持ち運べる携帯性は紙の本にはない魅力ですが、紙には紙だからこそ感じられる魅力もあります。今回ご紹介するのは、読むだけではない、物としての本にも注目している資料です。

『「本」に恋して』では、原材料である紙の製造工程から、装丁の決め方、製本作業、印刷の色指定の裏側など、紙の本が完成するまでを、実際にそれぞれの工場を取材して描かれています。著者は編集者でもあるので、編集段階も含めた本の製作過程がうかがえます。さらにイラストレーターの内澤旬子氏による細密で温かみのあるイラストが数多く挿入されており、それぞれの工程を魅力的に伝えています。

『印刷に恋して』は前述の本と同じ著者とイラストレーターによるもので、本が作られる工程のうち印刷技術について詳しく紹介されています。若干専門的な内容が多いのですが、内澤氏のイラストが理解を助けてくれます。

手触りなどで確認できる紙質や装丁とは異なり、完成した本から印刷工程はなかなか想像できませんが、活字を組んでプレスする活版印刷という技術で印刷された紙は、文字の上を指でなぞるとかすかな凹凸が感じられます。印刷技術の進歩により活版で印刷されるものはほとんどなくなってしまいましたが、現在でも漫画雑誌や週刊誌などザラザラの再生紙で発行されるものは活版で刷られているそうです。手に取る機会があれば、ぜひ誌面の凹凸を確認してみてください。

電子書籍か紙の本かという択一論が語られることもありましたが、電子書籍の便利さと紙の書籍の味わい、両方を上手に楽しみたいですね。

2012年1月20日(谷)