2007.05.18

おすすめ資料 第25回映像と文学の遭遇

A.ソクーロフ, 島尾ミホ, 吉増剛造著 ; 児島宏子訳 『ドルチェ-優しく : 映像と言語、新たな出会い』岩波書店 [N778.21-21]

ロシアの映画監督アレクサンドル・ソクーロフが詩人吉増剛造に導かれて奄美で島尾敏雄夫人と出会い、映画『ドルチェ-優しく』が誕生しました。島尾ミホが「島尾ミホ」を演じる《映像小説》とも言える映画と同名のこの本は詩人の序詩に始まり、映画にかかわった詩人・監督・ヒロインによる鼎談、監督の撮影日記、ヒロインのエッセー、監督と詩人の対話、採録台本で構成されています。

「読んでから見るか、見てから読むか」というかつて一世を風靡したキャッチコピーではありませんが、島尾夫妻の作品を読んでからこの映画を見て、この本を読めば監督が伝えたかったことがより理解できるのではないかと思います。映画のDVDも視聴覚ライブラリーに所蔵していますので、あわせてご覧ください。

島尾敏雄氏は1947年より5年間本学で教鞭をとられた本学に縁のある方です。若き日に先生の薫陶を受け、その後も敬愛しつづけた卒業生の方々のご尽力により、先生の没後5年目の1991年に本学図書館で島尾敏雄文学関係資料の展示が行われました。最終日には「島尾敏雄と神戸」というテーマで島尾ミホさんに講演をしていただきました。黒いベールと喪服を身にまとわれた姿が瞼に焼き付いています。この展示にあわせて神戸市外国語大学図書館編『島尾敏雄書誌』[N910.268-B=103]が編纂されました。この書誌をガイドに島尾作品を紐解く人が出てくれば、この映画と本を作られた監督の思いがいくらかでも達成できたのではないでしょうか。

映画に出演された島尾夫妻の長女マヤさんは2002年に、ミホさんもこの3月25日にご逝去されました。ご冥福をお祈りします。

2007年5月18日(冨)