2007.10.19

おすすめ資料 第47回身近なものからユビキタスを考える

坂村健著『ユビキタスとは何か : 情報・技術・人間 』(岩波新書新赤版 1080)岩波書店 [N080-25-1080]

ユビキタスという言葉は今では広く知られていますが、では、「ユビキタスとは何か」と問われても「偏在というのが本来の意味らしいが、どこにでもコンピュータがあるという意味かな。」程度の理解が一般的ではないでしょうか。宗教問答のようで、何のことかわかったようでわからないのです。そのような方にうってつけなのが本書です。

23年以上も前からトロン(TRON:The Real-time Operating system Nucleus)プロジェクトを提唱され、「どこでもコンピュータ環境」の構築を目指している著者が、ユビキタスという概念を身の回りにあるモノを例示して具体的にどういうものなのかをわかり易く解説しています。

「ユビキタス・コンピューティングの本質は、モノ・人・空間を主とする、実世界の状況(コンテクスト)=時間と場所の情報の認識です。」とありますが、実在する物全部があたかもクリックする対象になったかのように、「これ」「あれ」と指示したとたんに、その物の情報を格納しているところから情報を取得して利用できる世界がユビキタスなのです。この夢のような世界の実現に著者は尽力されていますが、実現するには技術の進化だけではなく制度の問題があることも示唆されています。 。

2007年10月19日(冨)