2008.07.18

おすすめ資料 第69回単一性社会日本の特徴とは

中根千枝著『タテ社会の人間関係』(講談社現代新書) 講談社 [K105]

刊行されて30年余り経過してなお、増刷され続けている社会学の名著です。 読み進めてゆくと、日本の社会の枠組みは時代が移ってもそう大変わりしていないように思えます。著者は日本の社会の特徴を一例として次のように述べます。

  • 人は自身の持つ資格(技能)より先に、属する組織の一員として認識される。
  • 血のつながりがあっても他所に嫁いだ娘は「他家」の人、血のつながりはなくても嫁いできた女性は「家」の人。
  • 能力主義を阻むものは評価する側を問題とするばかりでなく、評価される側にも横一列であろうとする意識が働くからである。

著者はそれらの特徴を日本が世界でも稀な単一社会であること、それゆえに厳格なタテ社会を形成してきたことに答えを求めます。タテ社会の長所・短所も分析し、短所では上役がいなくなったときの組織のもろさや、論理を軽視したために無防備で情感に流された思考に流れやすい、とも述べています。海外との比較についても多く言及されているので比較文化の書としても読める資料です。

2008年7月18日(梶)