2008.12.05

おすすめ資料 第78回 CDで聴く『源氏物語』

関弘子読み手『源氏物語』CD100枚 [CJR-1-1~69](視聴覚ライブラリー所蔵資料) <リンクなし>

今回紹介するのは、阿部秋生校訂『完本源氏物語』(小学館)をテキストに女優の関弘子さんが全54帖を語り、5年の歳月を費やして自主制作された100枚にも及ぶCDです。

どのようなご縁で関さんより本学にご寄贈をいただくことになったのかは今は知る由もありませんが、1994年11月に「桐壺」2枚、「帚木」2枚、「空蝉」1枚の5枚をお送りいただいたのを初めとして、以後、3ヶ月毎に5枚、あるいは4枚、6枚と1999年8月までの長きにわたり、全巻をお送りいただきました。

関弘子さんは、劇団俳優座の1期生で、劇団青年座立ち上げにも参加され、世阿弥の再来と絶賛された天才能楽師故観世寿夫氏と結婚後は「冥の会」を立ち上げられました。女優、声優としても活躍され、金田一春彦氏との共同作業で、平安時代の言葉の発音による源氏の朗読もされた、語りの第一人者です。

読書で行間を読み、思いをめぐらすのも楽しいことですが、抑揚のあるリズムと間で綴られる源氏物語も一興です。雅楽の流れる中、朗読のプロによる迫力ある語りは、聴く者を雅やかな源氏の世界に誘います。

奇しくも源氏物語千年紀に当たる今年の5月11日に関さんはご逝去されました。最終巻の送り状には、関さんのご挨拶文があり、「もし、いつか、誰かが、何らかこのCDを役立ててくださいましたらと。ひそかに願うのみでございます。本当に皆様、有難うございました。」と結ばれていました。

この音声資料を来年度より増築される図書館閲覧室の視聴覚コーナーでより多くの方々に聴いていただくことが可能となることが、関さんのご遺志に報いることになるのではないかと思います。

2008年12月5日(冨)