2009.02.20

おすすめ資料 第83回読む力、学ぶ力

妹尾堅一郎著『考える力をつけるための「読む」技術 : 情報の解読と解釈』ダイヤモンド社 [N002-62]

日本においては「読み書き算盤」ができる人がほとんどです。「読み書き算盤」とは少し古い表現ですが、「リテラシー」と言い換え、基本的な読み書き能力のことを指すことがあります。コンピュータの普及に伴い、学生や社会人に求められるリテラシーは変容してきました。

本書では、リテラシーの中でも特に「読む」力に焦点をあてています。情報は多様な姿で私たちの前に現れます。本書に現れる情報は、図表、統計、新聞、専門分野の本、百科事典、年表、ウェブサイト、学問と理論の8つの形をとっています。コンピュータの登場で膨大な量の情報を集積し、計算処理し、発信することができるようになった現代、それらの情報を適切に読み解く能力を磨かなければ、情報の洪水の中で溺れてしまいかねません。もっと恐ろしいのは、コンピュータによって情報の処理だけでなく入手も簡単になったために、よく吟味せずに目の前の情報を正しいものとして流用してしまったり、唯一の正解として信じ込んでしまうことです。

それぞれの情報には「読み方」があります。図表や統計、年表なら、データ選択や配列の陰に作成者の意図が隠れています。新聞も、客観的な事実のみを述べているとは限りません。ある分野の基本事項を抑えるには、まず百科事典に当たるのが早道ですが、事典ごとに編集方針があり、特徴を踏まえて読むのが賢い利用法です。さらにある専門分野について深く知ろうとするなら、大学学部レベルの学習者を想定して書かれた教科書にあたると、次のステップへ進みやすくなります。ウェブサイトの情報を利用する際には、その情報の鮮度(いつ公開されたデータか)と出典の確かさ(サイト運営者は誰か)に注意して読む必要があります。

こうした読み方の「技術」を指南してくれるのが本書です。読む技術が身につくと、自然と書くこと、考えることにも発展していくケースも例としてあがっています。自分ではできると思っていた「読み書き算盤」、実は穴だらけかもしれません。より高度な「リテラシー」を目指して、読む技術をブラッシュアップしましょう。

2009年2月20日(永)