2009.04.03

おすすめ資料 第86回 「考える」ことを考える

外山滋比古『知的創造のヒント』(ちくま学芸文庫) 筑摩書房 [N080-30-20-10-2]

「知的創造」というと身構えてしまいそうですが、知的創造をするために自分で「考える」コツを分かりやすく教えてくれる本です。

各章で様々なヒントが紹介されていますが、なかでもおすすめなのが、筆者が大学で外国文学科の学生を対象にした講義で毎年紹介していたという"どうすれば論文が書けるのか"という話です。

「酒を造る」というタイトルのこの章では、ひらめいたアイデアを論文のテーマとして発展させるにはどうすればよいのか、酒づくりになぞらえて説明し、実例として、シェイクスピアを読んだ感想が論文のテーマとして発展していく過程が詳しく紹介されています。

他章でも「忘却」「読みさし」のすすめなど、ユニークな思考術や、著者による実践の様子などが数多く紹介されています。

「知識の記憶」ではなく「知的創造」をすることの必要性とその難しさを説きつつ、「考える」ことを始める人へのエールにあふれています。皆さんが大学で取り組む知的創造にきっと役立つことでしょう。

2009年4月3日(谷)