2009.06.05

おすすめ資料 第90回 人を裁くということ

秋山賢三著『裁判官はなぜ誤るのか』 (岩波新書 新赤版) 岩波書店 [N080-25-809]

本書は、25年間裁判官を務めた後に現在は弁護士として活躍する著者が、自らが関わった冤罪事件を通じて、わが国の刑事裁判のあり方について記述した本です。

先日、日本でも裁判員制度がスタートしましたが、皆さんは「もし自分が裁判員に選ばれたら...」と考えてみたことはありますか。被告人は本当に有罪なのか、どれくらいの量刑が相応しいのか、正しい判断を下す自信はありますか。裁判官に任せておけば大丈夫と気楽に考えてはいませんか。

犯罪白書などの統計によると、日本の刑事裁判による有罪率は99.9%。一度起訴されるとほとんどの場合有罪となってしまうのが現状です。これが全て本当に罪を犯した人に対しての有罪判決であれば、とても優秀な数字だと言えるのですが、なかには無実の罪で逮捕・起訴されてしまう人がいるのも事実です。裁判官が法のプロであることは確かですが、プロでも間違うことはあります。また、裁判官だけの問題ではなく、日本の刑事裁判のシステム上、冤罪が生まれてしまう危険があるということもこの本の中には書かれています。

著者は、裁判官が誤ってしまう理由を明らかにするだけではなく、誤らないためにはどのような工夫が必要かも具体的に提案しており、裁判官や法律を学ぶ人に限らず、これから裁判員となる可能性のあるすべての人にとって一読の価値がある内容です。この本を足がかりとして、自分ならこう裁かれたいと思う裁判はどんなものかを考えてみて下さい。

2009/6/5(福)