2009.08.28

おすすめ資料 第95回 ワープロ全盛時代の「生原稿」―文字は人なり?―

今年生誕100年にあたる太宰治の作品が様々に意匠を凝らして新たに出版されています。そのなかでも『直筆で読む「人間失格」』は、「生原稿」というものが作家の創作過程やその意図したモノを知るために重要であることは当然のこととして、ことに太宰の場合「太宰は自分のためだけに書いてくれている」と読者に思わせてしまうような作家だという意味からもファン必見と言っていいのではないでしょうか。

太宰と同じ1909年(明治42年)には、昭和文学を代表する6人の作家たち(中島敦、大岡昇平、松本清張、埴谷雄高、花田清輝、長谷川四郎)が生まれていますが、1867年(慶応3年)も子規、紅葉、緑雨、漱石、熊楠、露伴、外骨が生まれています(坪内祐三『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』)。正に「当たり年」で「歴史的世代論」からも興味深く、色々と論じてみたい誘惑に駆られますが、今回はその中の一人夏目漱石の『直筆で読む「坊っちやん」』を合わせてお奨めするにとどめておきたいと思います。

2009年8月28日(牛)