2020年3月30日
2019年度学位記授与式・卒業式を挙行しました
3月25日(水曜)、2019年度学位記授与式・卒業式を執り行い、学部生439人、大学院生38人が卒業・修了しました。
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、式典は学科ごとに実施しました。また、恒例となっていた学位記授与式での卒業生一人一人の点呼を自粛し、各学科代表者のみへの授与となりました。
ここに、指学長の式辞を紹介します。
学長式辞
みなさん、卒業・修了おめでとうございます。
通常であれば、大ホールでみなさんを前にお祝いを申し上げるのですが、今年は、新型コロナウィルスのためにこのような形での祝辞となってしまいました。まことに残念なことです。
みなさんも一生に一度の晴れの舞台が台無しになったと寂しく思われていることと思います。
「一生に一度」とはよく使われる言葉です。しかし、考えてみれば、みなさんは、これから、常に一生に一度のことを経験し続けることになります。この世界では、まったく同じことがもう一度起こることはありません。よく似てはいても、それは違ったまた別の経験なのです。二回目には、前の経験を活かして、より良い対応をしてゆく。そのくり返しによって、みなさんはさらに成長されると思います。
病気によって社会が混乱するのも、今回が初めてではありません。歴史上、よく似たことがくり返されてきました。何の罪もない弱い立場の人が、パニックに陥った人びとの攻撃にさらされる、といった不幸な出来事もありました。身近な例では、2009年に新型インフルエンザが流行した際に、流行が始まった神戸・大阪の高校生、というだけで偏見の目を向けられるということがありました。不安のあまり、理性的な対応ができなくなってしまうのです。
社会不安の際には、不正確な情報や不安をいっそう煽るようなデマが広がりやすいということも歴史が示しています。今回も、そういった根拠のない情報がインターネットなどに乗って広がっています。しかも世界規模で同じような不正確な情報が拡散しています。しかし、そのたびに、人は賢くなり、前の経験を活かして適切な対応をしてきました。今回も、間違った情報への注意喚起もすぐに発信されています。
不安は疑心暗鬼を生み、さらに不安を煽ることになりがちです。事実とデマでは、デマの方が広がりやすい、という研究もあるようです。何かを悪者にすることで安心できるのかもしれません。しかし、それは本当の安心ではありません。ただ、目の前の状況を認めたくないと、目をそむけているだけです。そういった状況で、しっかり目を開いて、正しい判断をできるかどうかが、本当の「生きる力」だと思います。
みなさんは、本学での学びによって、多くの知識と学問的に体系立てて考える思考力を身につけられました。その知識と思考力を使って、世界を舞台にこれからも経験し続けることになる新しい状況に向き合って欲しいと思います。
ただ、知識も思考力も、そのままではいつか古び、衰えてしまいます。世界は変化し続けています。つねに正しい情報をアップデートするのを忘れずに、自分で考えることを怠らないようにすることが大切です。それこそが、知性であり、予測不可能な世界で生きてゆくために必要な力です。
卒業式がこのような形になったという経験が、みなさんの知性、生きる力をさらに強靱なものにしてくれることを期待して、式辞とさせていただきます。
卒業おめでとうございます。
2020年3月25日
学長 指 昭博