神戸市外大

現実は本の中にはない。
行って、見ないと、わからない。

中野貴行 外国語学部 国際関係学科 2001年度入学/2005年度卒業

きっかけはツタンカーメン。

 大学最後の夏休みに1ヶ月かけて、トルコからシリア・レバノン・ヨルダンに立ち寄りながらエジプトに行きました。ニュースではイラク戦争が頻繁に流れていたころでしたから、その隣の国に行くようなひとはまわりにいませんでした。
 とはいえ、戦争の実態を知りたいというわけではありませんでした。休学してイギリスへ語学留学していたときの同級生がトルコ人だったので、大学を卒業する前に会いに行ったんです。
 小学生のころから図鑑で夢中になっていたツタンカーメンやピラミッドを生で見たくて、トルコ〜エジプトの航空券を探したんです。でも想像以上に高くて、陸路で中東を周る旅になりました。

戦争中の怖い国だと思っていた。

 中東と聞くと、“怖い”とか“戦争”というイメージを持つひとが多いでしょう。じぶんもそうだったし、本からの知識で激しい民族対立がある地域と思っていました。ところが、行ってみるとイメージと実際は大違いでした。トルコ南部の街では、お店でトルコ人・アラブ人・クルド人たちが、仲良く談笑していました。シリアではキリスト教とイスラム教のグッズが並べて販売されているのも見ました。
 訪れた国の中でも、シリアはとくにみんなが親切でした。バスを待っていると、売店のひとが売り物のお茶を奢ってくれました。商店街を歩くと何人にも声をかけられ、アラビア語が話せない僕に質問攻めをしてくるので、近くにいた小学生が英語で通訳をしてくれました。

行ってみないと、わからない。

 本やニュースでどれだけ知っても、現地で起きていることがわからないことを中東で学びました。
 その後、卒業前にフィリピンのスラム街でNGOの活動をしました。そのときのじぶんには「国際協力=国連職員」というイメージしかなかったので、NGOにできることはとても小さく、そこに意味があるのだろうか?と、感じていました。ところが、コミュニティリーダーとして活躍するシングルマザーから「NGOの活動に関わる前は、じぶんなんて無力だと思っていた。でもいまはどうやってコミュニティを変えられるかを考えている。じぶんならできると信じている」と聞かされたのです。だれかの人生を変えることができる活動ってめちゃくちゃすごい!と、人生観がガラリと変わりました。やっぱり、行ってみないとわからないことを実感しました。

シリア支援団体を設立。

 現在、シリア支援団体 Piece of Syria の代表として、どこからも支援が届かない場所に教育を届ける活動をしています。
 卒業後、就職した一般企業をやめて青年海外協力隊を受験したところ、強い縁があったのかシリアに合格しました。2年間住みましたが、シリアの印象はやっぱりあのときのままで、とても素敵な国でした。ところが協力隊から帰国した1年後の2011年3月に戦争がはじまりました。そのときも、「行ってみないとわからない」と思い、現地へ飛びました。難民となったシリアのひとたちを訪ね、シリア周辺の国と欧州10カ国を半年かけて周りました。そこではやはり、ニュースとはまったく違うシリアのひとたちの想いや事実を知りました。
 自分の目と耳で確かめたことをもとにはじめたのがシリア支援団体です。

たった1人の想いが世界を変える。

 じぶん1人で「団体代表」と名乗って動き出した活動ですが、いまでは10人を超えるスタッフとともに、1000人を超えるシリアの子どもたちに未来を描ける教育を届けています。
 「世界を変えるのはたった1人の想いから」という言葉を大切にしています。活動を通じて学ぶことができた子どもたちは、シリアの復興や平和の担い手になってくれるでしょう。その子たちが築く平和なシリアへ、ツアーを募って遊びに行くことをめざしています。じぶんのように「イメージと実際が違う」と体感してもらえたらうれしいですね。

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