神戸市外大

本当に学びたいこと
を求めて、食と農の
フィールドへ飛び出した。

近藤 楓 外国語学部 国際関係学科 2012年度入学/2016年度卒業

イギリスに憧れて外大に入学。

 幼いころからイギリス文化に興味があり、外大は留学ができる大学だと知って入学しました。食と農に関心があったので、“食のヒストリー”のようなことを学んでみたくて、イギリスの大学へ行こうといろいろ調べたけど…。わたしが学びたいコースがあるような学部は見つかりませんでした。

それなら、ヨーロッパの農家を巡ってみようと考えた。

 イギリスの大学で学ぶのも貴重な体験だけど、実際に自分の目で見て体験して、自分なりの“Food Study”をしてみようと思い立ったわけです。文献やネットでどれだけ情報を調べても、実際に体験した温度感のある情報や学びは、それ以上に貴重ですもんね。だから、4年生になる年に1年間休学してイギリスやアイルランドを中心にヨーロッパ各地を巡り、いろいろなオーガニック農家を渡り歩きました。

オーガニック農家で実際に有機農業を経験。

 アイルランドに3カ月いて、4カ所のファームに滞在しました。永続的な農法で作物を育てていたり、家畜を草むらに放し飼いするような、自然に近い暮らしの様子をリアルに目にすることができました。その間は、常にオーガニックにふれているという感覚でしたね。あっ、このひとたちはオーガニック農法を実践するだけの農家というよりも、自然にも人にも負荷をかけないオーガニックという考え方のもとで暮らしているんだ。と、より深く知ることができました。2015年のことでしたから、まだ日本にはオーガニックという言葉があまり浸透していなかったと思います。

さまざまな作業に従事し、オーガニックの知識を深めていった。

 WWOOF(ウーフ/WorldWide Opportunities on Organic Farms)という、有機農場を営むホストファミリーとボランティアを結ぶ組織のWebサイトを活用して、さまざまな情報を得ながらイギリスとアイルランド各地で農家に滞在しました。そして、野菜の種まきや収穫などはもちろん、豚・牛・ヤギ・羊など家畜の世話にも毎日従事しました。中でも印象的な体験をしたのは、スコットランドの農家です。そこは精肉店も営んでいたので、肉の解体のアシスタントを務めたんです。カットした肉の梱包やラベル貼り、ソーセージやポークパイづくり、週末にはマーケットでの販売もしました。
 それまでの農家では家畜と実際に触れあってきたので、その姿が目に浮かび複雑な心境になりました。でも、命をいただいているということへの感謝の気持ちが芽生え、いま思い出してもとても貴重な体験ができたと思っています。じぶんの中にいろんな景色ができ、いろんな考えを持つことができました。

調理学校に入学し、得意のイラストをいかす。

 夏休みの間(5月〜7月)にイタリア、フランス、スイスなどを旅し、スローフードにもふれることができました。そして、フランスからフェリーに乗ってイギリスへ戻り、もともと好きだったお菓子づくりを本場で学ぶため、スコットランドの調理学校に入学しました。
 焼き菓子、パン、肉料理、魚料理、ジビエ料理など調理全般を学び、実習では地元の食文化を学ぶこともできました。日本で保護対象のキジやライチョウなども食用として親しまれていることに驚きました。馴染みのない野菜も多く、学校での日々は私にとって刺激の連続でした。
 食文化の違いに戸惑いながらも、なんとか必死に理解しようと、役だったのが得意のイラストでした。講師の話をイラスト付きでメモを取ることで、理解度を上げることができ、まわりからも認められるようになりました。小学校のときに絵画教室に通ったりしていたんですが、イラストを趣味にしてきて本当によかったと、思いました。

異文化を知ることで日本の暮らしや文化にも興味が湧いた。

 ヨーロッパ各地の伝統文化を間近で見るうちに、日本の伝統や暮らしをもっと知りたいと思うようになりました。その背景には、日本のことを聞かれたとき、自信をもって答えられないじぶんがいました。スローフードにしろ、オーガニックにしろ、マルシェにしろ、一時的な流行ではなく何年も前から各地の文化として根付いているものです。私も日本人として日本特有の伝統を、もっと知らねばと思いました。
 そして帰国後に京都の限界集落に滞在しながら伝統的な暮らしを学ぶプログラムに参加しました。柿を干す、味噌をつくる。日本ならではの伝統的な加工法が残る山の暮らしに、とてもカルチャーショックを受け、そこに“持続可能”な暮らしのヒントがたくさんあることに気づきました。

食育をやりたくて就職先を選んだ。

 休学中に畑から食卓までを経験したことで、「食の向こう側」を伝えるひとになりたいと思い、栄養バランスや健康だけでなく、体験を大切にした「食育」を仕事にしたいと考えました。そして、卒業後は「食育」の部門を持っている地域密着型のスーパーマーケットに就職し、料理教室や畑での食農体験などさまざまなカタチでの食育活動に携わりました。

北欧のお茶文化フィーカを日本に届けたい。

 お菓子づくりは好きだったけど、お菓子屋さんをやる予定はなかったんですよ。(笑)でも、いま、地元の愛知県岡崎市で「コンディトリ」という北欧の焼き菓子店を家族と運営しています。北欧に根付いているフィーカというお茶文化を広めたいという想いがあります。フィーカには立ち止まるという意味があるんですよ。忙しさに追われるばかりではなく、じぶんの日常を振り返るような“立ち止まりの時間”をお菓子とお茶を味わいながらゆっくりと楽しんでもらいたいです。
 そういう風習が伝統になって続いていくと、日々の豊かさが実感できるのではないでしょうか。

持続可能な暮らしかたを広めていきたい。

 自然に寄り添うオーガニック農家との暮らしや、環境意識の高いヨーロッパで過ごしたことで、「持続可能な暮らし」について考えるようになりました。環境問題はより深刻になってきており、私たちも無関係ではいられなくなっています。
 そこで、同じ思いを持つ地元の仲間たちと、『スコシズツ.プロジェクト』を始めることにしました。「できることから少しずつ、持続可能な暮らしかた」をコンセプトとして、身近な暮らしの中からSDGsの実践を提案しています。年2回開催のマーケットイベントでは、持続可能な社会をつくる、地球環境を大切にするなどのキーワードに共感したお店が集まり、マイボトルやマイ食器などを呼びかけてプラスチックフリーにも挑戦しています。
 個人の力は小さくても、みんなができることを持ち寄れば何かを変えられると信じて、これからも活動を続けていきたいです。

休学が大きなターニングポイントになりました。

 どんなことに関しても、温度感のある経験や学びは大変貴重です。ヨーロッパでの体験を通じて、経験は文献やネットの情報に勝る価値があると実感しました。学生の多くが休学して社会で見聞を広げているのが神戸市外大です。英語という武器を持っていることが大きいと思います。世界に飛び出してさまざまな活動をしてきた友人たちの話を聞くのも、とても刺激になります。
 何かに興味を持ったとき、それを探求する自由が許されている大学です。学生時代の経験や繋がりは一生もの。いろんなつながりができれば、世界に出ても不安がなくなります。
 さあ、あなたは一人じゃない!

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