2022年3月28日

2021年度学位記授与式・卒業式を挙行しました

3月25日(金曜)、2021年度学位記授与式・卒業式を執り行い、学部生466人、大学院生45人が卒業・修了しました。

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新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、式典は大ホールにて二部制で開催しました。

ここに、田中学長の式辞を紹介します。

学長式辞

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 卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、YouTubeにて動画をご視聴くださっておられる保護者の皆様におかれましては、ご卒業生の晴れ姿をご覧になり肩の荷を降ろしたお気持ちになられていることと拝察いたしております。これまでのご支援に敬意を表しますとともに、この場をお借りして祝意を表したいと思います。

 卒業生の皆さんは、今この場でご卒業を迎えるに当たって、大学時代の様々なご経験を思い起こしているのではないでしょうか。思い起こしていない方は、少しご自分の大学生活を振り返ってみて下さい。本学での生活は、この大ホールで行われた入学式からスタートしました。皆さんの大学生活の前半では、ごく日常的なキャンパスでの勉学や課外活動、友人との様々な議論や会話を楽しむといった、いわば「普通の学生生活」を経験されてきたことと思います。しかし、2年前の2020年初頭に新型コロナウイルス感染症が流行し始めると、事態が大きく変化することになりました。2020年度当初は、今まで経験したことのない緊急事態宣言が発令され、大学での授業開始が大幅に遅れ、皆さんも授業や大学での諸活動がどうなるのかとやきもきされたことと思います。ここから、いわゆるコロナ禍の下での大学生活の後半が始まることになりました。このコロナ禍では、楽しみにしていた海外での留学を断腸の思いで断念された方、また海外からやっとの思いで帰国された方、オンラインの生活で目標を失いかけた方、希望する業種への就職を諦めた方、といったように非常に辛い思いをされた方も多かったのではないかと思います。その意味で、皆さんの大学生活は「普通」の生活から「普通でない」生活へと大きく変化したと言えるでしょう。

 国際情勢に目を転じますと、今日現在もウクライナでは、1ヶ月前に始まったロシア軍による軍事侵攻によって、人々が死と隣り合わせの悲惨で「異常な」生活を送らざるを得ない状況に置かれ、世界の人々の心を痛める事態となっております。ウクライナに居住していた人々は、数ヶ月前にはロシアによる政治的なプレッシャーを感じながらも、ごく「普通の」生活を送っていたわけですので、1ヶ月前を境にして「普通の」生活が激変し、天国から地獄へ落とされたかのような事態に直面しています。

 コロナ禍と戦争は、もちろん次元が大きく異なるものですが、この2つの事例は、私たちが「普通」だと思っていることが、実は非常に脆いものであることを示しています。私たちは「普通」の生活を送っているときには、この事実を忘れがちなのですが、「普通」というのは非常に脆弱なものであることを、社会に出るに当たって今一度肝に銘じていただきたいと思います。皆さんは、これから様々な道で新しい生活を始めることになります。現代はまさに非常に大きく社会が変化している激動の時代となっておりますので、そうした生活を進めていく途上では、「普通」だと思っていたことが崩れていく局面に直面するかもしれません。そうした局面に立ったとき、どのように対応すれば良いでしょうか?

是非、局面を観察して問題点を探し出し、自分の頭でじっくりと考えてみて下さい。コロナ禍での経験は、この点の重要性を物語っています。コロナ禍になってから、人々は様々な問題を見出し、これに対して多様な解決策を提案し実行してきました。ある人は緊急事態宣言下でどのように対応して良いか分からない外国人に対して、オンラインを通じて情報提供を行う取り組みを行ってきましたし、オンラインツールを持ち合わせていない高齢者に対してボランティア活動で対応し高齢者を援助した人々もいます。本学でも種々の情報入手ができない当時の新入生に対して、多くの友人の協力を得ながらオンライン上で情報提供を行った人々がいます。これらの例は、コロナ禍という困難な局面で生じた様々な問題を発見し、それに対する対応を考え行動に移すことによって、困難な状況を少しでも打開する道が社会を動かしていることを教えています。

皆さんの辛いコロナ禍での経験は、これから直面するかもしれない困難な局面を打開する力になることを私は信じています。これからの社会生活で苦境に直面したときには、立ち止まって大学時代の後半に経験したことを振り返っていただければと思います。

 最後に、皆さんにご報告したいことがございます。先ほど総代の方にお渡ししました学位記は日本語のものでしたが、後ほど教室にてお渡しすることになる学位記には日本語のものに加えて、英語版を併せてお渡しすることになります。英語版を併せてお渡しするのは、今回の卒業生が最初となります。今年度の後半に多くの教職員の協力を得て、皆様にお渡しすることができる運びとなりました。コロナ禍での皆さんの苦境に対して、ささやかではございますが、はなむけとさせていただければと考えておりますので、後ほどご確認下されば幸いです。

 では、これから社会人として様々な場に出て行かれる皆様が、健康に恵まれて社会でご活躍なさいますことを心よりお祈り申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。ご静聴、ありがとうございました。

2022年3月25日

学長  田中 悟