お知らせ

2025年3月27日

2024年度学位記授与式・卒業式を挙行しました

3月25日(火曜)、2024年度学位記授与式・卒業式を執り行い、学部生397人、大学院生30人が卒業・修了しました。

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今年も修了生・卒業生全員の氏名の読み上げ及び校歌斉唱を実施しました。

ここに、田中学長の式辞を紹介します。

学長式辞

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卒業生の皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。また、別室にて式典にご列席なさっておられる保護者の皆様には、ご卒業生の晴れ姿をご覧になり、喜びにあふれたお気持ちになられていることと拝察いたしております。これまでのご卒業生に対する物心両面にわたる献身的なご支援に敬意を表しますとともに、この場をお借りして祝意を表したいと思います。

さて、卒業生の皆様が大学に在籍された期間には、実に様々な出来事が起こりました。5年前に勃発したコロナ禍のように、近年では私たちが予想していない出来事が数多く生じています。ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区におけるイスラエルとハマスによる戦乱に象徴される戦争や紛争、昨年の能登半島を襲った地震や洪水、現在日本の各地で多発している山火事はそうした出来事の例となるでしょう。また、最近の日本では円安や物価高が急速に進行しており、皆さんの生活にも大きな影響を与えています。こうした近年の出来事は、時代が激動の時代に入っていることを示す証左であると考えることができるように思います。

皆さんは、こうした激動の時代にご卒業され、社会に飛び立とうとされております。こうした変化の激しい時代に直面するとき、レジリエンス(resilience)――すなわち困難な状況やストレスに対する耐性――を備えることは極めて重要です。変化の激しい時代には、私たちは往々にして大きな困難に直面し、強いストレスを感じます。こうした困難やストレスに対して、これを跳ね返し、速やかに回復する能力を持つことは、社会で活躍していく上での基盤になるものだと思います。皆様には、是非、レジリエンスを持った社会人となっていただきたいと強く願っています。

レジリエンスを備えるために、どのようなことに注意すればよいのでしょうか? 日本の伝統的な建築にそのヒントがあるのかもしれません。日本を代表する著名な建築物として、法隆寺の五重塔があることはよく知られています。この五重塔は日本最古の木造造りの塔で飛鳥時代の7世紀末頃に建立されたものと考えられています。以来、災害大国である日本で1300年余りの期間にわたって、倒壊せずに建築当時の元の姿を今に伝えています。法隆寺の五重塔がこのように災害に非常に強い理由の一つは、柔構造と呼ばれる建築工法が採用されていることにあると言われています。柔構造では、建築が受ける外部の力――たとえば地震や風の力――を、柱や梁などの部材の接合部分に余裕を持たせることによって分散し吸収することが災害に強い建築を作り出しているとされています。

こうした法隆寺の五重塔のたとえは、レジリエンスを備えるためには、直面する困難な状況に際して心の余裕を持ちながら、しなやかに対処することの重要性を示唆しているように思います。皆さんは、大学での日々の勉学を通じて語学や専門知識を身につけられました。また、様々な授業の場で聞き手に分かりやすく伝えるプレゼンテーションの方法について学んできました。さらに、先生や友人との討論の中で適切なコミュニケーション能力も養ってきたのではないかと思います。こうした大学での生活で身につけた様々な能力は、これから直面するであろう様々な困難な状況に対応するのに十分なものだと確信しております。皆さんが養ってこられた多様な能力を信じることは、皆さんに心の余裕を作り出すことでしょう。こうした心の余裕を持ちながら、いわば「自然体で」状況に対処していくことで皆さんのレジリエンスを高めることができるのではないかと思います。皆さんには、大学で学んだ能力を信じ、心に余裕を持ちながら「自然体で」様々な困難を乗り越えられることを心より願っております。

皆さんは、それぞれの進路に応じて、これから様々な場所で活躍なさることと思います。皆さんが大学時代を過ごしたここ神戸の地は、現在変貌を遂げつつあり、5年後や10年後には現在と相当異なった街になるのではないかと思います。しかし、それぞれの活躍の場で、皆さんが大学時代を過ごした神戸の地を忘れずに、強いレジリエンスを保ちながら、世界に通用する次世代の社会を作り上げていただくことを心よりお祈り申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。ご卒業、本当におめでとうございました。また、ご静聴、ありがとうございました。

2025年3月25日

学長 田中悟