お知らせ

2025年4月11日

2025年度宣誓式・入学式を挙行しました

4月7日、459人の新入生を迎えました。  新入生は、小原一徳神戸市副市長から祝辞をいただき、教職員をはじめ多くの方々から祝福を受け、本学学生としての大学生活をスタートさせました。

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ここに、田中学長の式辞を紹介します。

学長式辞

 新入生の皆さん、神戸市外国語大学へのご入学、おめでとうございます。また、別室にてご列席なさっている保護者の皆様におかれましては、ご入学生に対するこれまでのご支援に、大学教職員を代表して敬意を表しますとともに、この場をお借りしてお祝い申し上げます。本日、本学には、大学院に28名、学部に431名の新入生をお迎えすることになりました。本学に459名の新しい学生をお迎えできますことを、私たち一同大変喜んでおります。

 さて、近年、様々な分野で、私たちが予想しない事象が数多く生じ、私たちの生活にも大きな影響を与えてきました。5年前に私たちを襲ったコロナ禍は、以降数年間にわたって世界中の人々の生活を大きく制約しました。大きな自然災害も日本だけでなく世界各地で頻発しており、10日前にミャンマーを襲った大きな地震は中心的な被災地で甚大な人的・物的被害を引き起こしただけでなく、震源地から1000Kmも離れたタイのバンコクで工事中の高層ビルが、長周期震動の影響によって倒壊し世界の人々に大きな衝撃を与えています。

 近年私たちの予想を超えた急速な技術進歩がみられる生成AIは、今や皆さんの身の回りの様々な領域で実装化されてきており、私たちはこうした生成AIの利活用の仕方を学ぶだけでなく、AIをどのようにコントロールしていくべきかという重い課題にも直面しています。また、直近では、トランプアメリカ大統領による関税政策が、世界の政治経済に大きな影響を与えつつあり、第2次世界大戦後に西洋諸国を中心に築き上げられた経済体制のあり方に再考を迫るものになる可能性も指摘されています。

こうした近年の様々な領域における大きな事象は、時代が単に変化の激しい時代に入っていることを示すだけでなく、これまでの常識が通用しない――いわばモードが変化している――時代に突入しているように思います。このようにモードが変化して時代が大きく変化するときに、私たちはどのように対応すればよいのでしょうか?

 新しい建物を建設するときには、私たちは建物を構成する様々な部材を考慮しながら、詳細な設計図を作成するでしょう。また、新しい商品やサービスを作り出すときにも、そうした商品やサービスの作り方や特徴を示す文書や図面を準備すると思います。これと同じように、時代が大きく変化するときには、時代が直面する課題に対応する新たな設計図――それは未知の感染症や自然災害に対応するものかもしれませんし、AIを適切に利活用するものかもしれませんし、新たな政治経済システムに対応するものかもしれませんが――を描いていく必要があります。

 しかし、こうした設計図を描くことは並大抵のことではありません。設計図を描いていくためには、多くの専門的な知見を持つ人々の共同作業が必要不可欠になります。こうした設計図を描いていくための羅針盤の役割を担っているのが、大学なのではないかと思います。大学では、多様な専門分野を持つ多くの教員が所属しています。皆さんには、大学が提供する専門知識を身につけて、新しい時代の課題に対応する設計図を描くことができるよう成長していただきたいと願っています。

 新しい建物や新しい商品・サービスは、ただ待っているだけでは生み出すことができないのと同様に、こうした成長を図っていくためにはただ受動的に与えられた勉学を行うだけでは不十分です。時代が要請する新たな諸課題に対応する設計図を描いていくためには、何に対応する設計図なのかを明確にする目的意識を持つことが必要不可欠なものとなるでしょう。しかも、現代の新たな諸課題は、自然科学系分野と人文・社会科学分野が共同しながら、問題解決を図らなければならないものが数多くあります。たとえば、AIの仕組みはプログラムに集約されますから、情報科学という理系的なものから成り立っていますが、その利用をめぐって生じる多くの課題――たとえば、先に言及したAIの人間によるコントロールの問題――はすぐれて人文・社会科学的なものです。このような問題に象徴されるように、現代社会が直面する諸課題は広範な領域にまたがっています。皆さんには、ご自身の目的意識を深化させることに加えて、自然科学的な諸課題にも目を向けながら、自身の問題意識を一層精錬したものとすることを強く期待しています。こうした広い目的意識を持ちながら、自主的・自律的な学びを行うことが、新たな設計図を描くことのできる能力を培っていくのだと思います。

 ともすれば、皆さんの中には理系分野に苦手意識を持っておられる方がおられるかもしれません。そうした方には、是非食わず嫌いを克服し、苦手意識を持つ理系分野の勉強にもチャレンジしていただきたいと思います。ご存じの方も多いかと思いますが、一作年度より本学はお隣の神戸市立工業高等専門学校と共に、神戸市公立大学法人という同じ法人の下で運営されております。昨年度からは、違う専門分野を持つ両校の学生の交流活動だけでなく、両校が提供する一部科目の単位互換の仕組みを通じて、両校の学生が共に学ぶ授業もスタートしています。苦手意識を持つ方には、苦手意識の克服の機会として、神戸高専の学生との交流を行いながら、文理を横断する広い視野を養うことにチャレンジしても良いかもしれません。

 大学・大学院時代では、様々な困難に直面するかもしれません。勉強に行き詰まったり、友人との人間関係に悩む場面もあるかもしれません。こうしたときには、周りの教員や先輩・友人たちと話をしたり、しかるべき相談窓口で相談してみてください。そうした困難を乗り越えていくこともまた、大学・大学院時代の経験を通じた学びとなります。皆さんが、この貴重な大学・大学院時代の期間で、関心を持つ領域の専門性を高めるとともに、広い問題意識を持ちながら、社会が直面する広範な課題に対応する設計図を提供し課題の解決を図ることができるような能力を身につけ、大きな成果を上げられることを心よりお祈りして、私の式辞とさせていただきます。

2025年4月7日
学長  田中 悟