研究科長からのメッセージ
大学院で学ぶということは、研究者の第一歩を踏み出すことです。あらゆる研究のはじまりは「謎」です。研究の目的はその謎を解明することです。あるいは、すっかり解明出来ないとしても、少なくとも謎の解明に確実に近づくことです。世の中で十分に明らかになっていない事象に光を当て、新しい知識で、新しい視点で、世界をより良く豊かにしていくことが研究者には求められます。そうした先人の研究の積み重ねで人間社会は発展してきました。皆さんはそのバトンを受け継ぎ、大学院から本格的に研究に着手します。「謎」という字に「迷う」が入っているように、研究に困迷はつきものです。大方の研究者は強い探究心と博学篤志をもってそれを乗り越えてきました。1つの問いにも多様な視座からのアプローチが可能です。先学、後学、教員、学生の垣根無く、学問を志す同志として、時に互いに問題を共有し合い、議論することで、自分の研究に役立つ観点が得られることは少なくありません。そしてそのような研究者コミュニティは、皆さんの周囲だけでも、日本だけでもなく、世界中に存在します。大学院で研究を志したその日から皆さんは大きな世界の研究者コミュニティの一員です。恐れずに問いかけ、意見を交わし、他者の知見と経験を自分の研究を昇華させる機会にしてください。研究成果は、自身の学問的問いを解消するためのものであると同時に、世界の知識をアップデートする社会的意義を持つものです。そのためには、自分の殻に閉じこもらず、積極的に行動する力が求められます。皆さんが神戸市外国語大学大学院で行う研究活動が知的好奇心をくすぐる、実り多きものであることを祈っています。
大学院 外国語学研究科長 金子 百合子